【千葉魂】エースの風格漂う20歳 指揮官うならせた田中晴 千葉ロッテ(第473回)

田中晴也
田中晴也

 指揮官をうならせる投球だった。プロ3年目の田中晴也投手が5月27日、本拠地ZOZOマリンスタジアムでのバファローズ戦で7回、被安打2、無失点のピッチングでチーム最多の今季3勝目を挙げた。ストレートは加速し、変化球は思い通りに曲がっていった。

 「ストレートを生かすための変化球をうまく使えた。いい感じでした。援護点もあったので、大胆にいけたという感じもあります」と充実した表情で試合を振り返った。

 ベンチで見守った吉井理人監督も驚く配球もあった。六回2死。好調の広岡大志内野手を打席に迎えた場面だ。ストレートで押す投球から一転。初球、チェンジアップで空振りを取ると、2球目は外のスライダーでボール。3球目、再びチェンジアップで空振りを取ると、最後は外へのスライダーで空振り三振。マウンドでガッツポーズを見せた。

 指揮官は「今日はストレート主体の配球だったけど、あそこは一転、変化球押し。ああいう配球ができるのは驚いた。プロ3年目の田中と2年目の寺地が大ベテランのような配球。感動した」と若武者たちの成長に目を細めた。

 田中晴也もこの場面に関して「よく覚えていますよ。打者の反応を見ながら。チェンジアップがよかったので。ストレートを狙っていたのが分かっていたので」と、してやったりとばかりに満足そうに笑みを浮かべた。

 1歳年下の寺地隆成捕手とは毎回、投げる前に先頭打者の配球をしっかり話し合い、決めてからマウンドに行くという決まりを作った。そのおかげで迷いなくイニングに入っていけた。「前回の反省から回の先頭をまず全力で抑えることを意識していた」と田中晴也。その言葉通り、三回以外は毎回、先頭打者を打ち取り、試合を優位に進めることができた。「回の先頭を抑えることで当然、失点はだいぶ減る。そこを意識した」と胸を張る。

 前回先発した5月16日のファイターズ戦(ZOZOマリンスタジアム)は初回にいきなり先頭打者にヒットを許すと、リズムに乗れず、あっという間に3点を失うなど6回4失点。悔しい結果にその夜はなかなか眠りにつくことができなかった。「元々、登板した夜は寝られない。あれこれ試合を振り返ったり、いろいろな場面が浮かんでくる」と話す。ベッドの上で出した答えは回の先頭打者をしっかりと抑えることだった。そのためにバッテリーでしっかりと考えを統一してからマウンドに上がる。それが功を奏した。

 6月で21歳だが、すでにエースの風格も漂う。「カード頭でしたし、週の頭でもあった。そこを勝つとチームに流れができるし、楽になる。そう思ってだいぶ気合が入っていました」と力強く話す。そして「ここまでチームとして、ちょっと流れに乗りきれなかったり、上手くいかないことがあるけど、マリーンズは強いチーム。なにかキッカケ一つだと思う。自分は流れを作る投球がしたい」と前を向いた。

 覚醒の時を迎えた背番号「35」。次回登板でもマウンド上からゲームを支配しているような圧巻の投球を披露しチームを鼓舞する。マリーンズの若きエース候補がいよいよ本格化の時を迎えようとしている。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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