2021年2月17日 05:00 | 有料記事
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空港で、愛子の乗る飛行機が離陸時間まであと二十分であることをアナウンスが知らせた時だった。
「もう行かなくちゃ」
と言って、愛子が多佳子を多喜子に戻す。ショルダーバッグを肩にかけなおし、
「ちょっと話があるの」
良夫の腕に自分の腕を絡ませた。そのまま、多喜子から少し離れた場所へ連れて行く。
「ねえ、本当はあなたも気づいているんでしょう? あの子の気持ち」
一瞬だけポカンとした良夫は、愛子から身体を放し、目を見開いた。
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