「裂け目」 『きつねのはなし』

  「聞いた事の無い不思議な声」を聞きたくて、森見登美彦の『きつねのはなし』を読んだ。「不思議な声」とは、友人が評した森見氏の文体の事だ。小説の文体には、確かに声がある。文字と行間から響いて来るその声に導かれて、私たちは物語を読むのではないだろうか。

 文体には色もある。色とは、 ・・・

【残り 1016文字】



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