「情愛」 『きつねにょうぼう』

 ぽつぽつ降っていた雨は止んだが、空は灰色で冷たい風が吹いていた。「そら、もう冬が来たんだぞ」とささやきながら、枯葉が足もとを転げて行く。その日は朝の読書で、小学四年生に絵本を読む日だった。本は選んであったのだが、重く暗い空を見ているうちに、子どもたちに昔話を届けたくなった。心 ・・・

【残り 1157文字】



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