中谷順子選 【日報詩壇】

 望郷
  大網白里 滝沢ゆき子

あの人が
何も語らなかった理由を
想像する
(裏切り)という語句に
今は血の匂いさえ感じない
(約束)という儀式に
終末感すら漂う
そんな時間があったという
花弁のように広がる
脇腹の銃痕について
どんな言葉を投げかければ
解を得られたのだろう
あの人は何も語ら ・・・

【残り 1467文字】



  • Xでポストする
  • LINEで送る