2022年9月1日 11:00 | 有料記事

ゴルフ練習場の鉄柱が倒れた住宅街。住民は連日のように自宅荷物の運び出しに追われた=2019年9月10日、市原市五井
「練習場が悪い。責任を取るべき」。2019年9月9日の房総半島台風(台風15号)で市原市のゴルフ練習場の鉄柱が倒壊し、近隣住宅が押しつぶされた。SNSを中心に練習場を非難する言葉があふれた。一部メディアは法的責任を追及したり、検証記事や番組を展開、一つの地域が「加害者=練習場」と「被害者=住民」に分断された。だが、取材を進めると、単純な構図では割り切れない思いが浮かび上がった。(報道部・渡辺翔太)
※この連載は房総半島台風(台風15号)から半年の2020年3月、千葉日報本紙とYahoo!ニュースで公開したものを再掲載しました。肩書きや年齢、データなどは掲載当時のものです。
◆2カ月間手つかず、全国から「何とかしろ」

鉄柱が倒れたのは市原市五井の「市原ゴルフガーデン」。約2カ月もの間、鉄柱は家々にもたれたまま手つかず状態だった。被災したのは30軒程度で、うち15軒に直撃した。今年2月現在、11世帯が借り上げ住宅に避難している。
報道各社は連日、現場からニュースを伝えた。撤去工事に関する住民説明会が開かれると、練習場の渡辺陽子オーナーにマイクが一斉に向けられ、補償に関する質問が殺到した。市役所には「オーナーを何とかしろ」「指導しろ」などの声が全国から寄せられたという。
◆「謝ってほしかった」
被災した住民の生活再建は前途多難だ。「練習場にも負債があると聞く。ADR(裁判外紛争解決手続き)を待つだけでなく、 ・・・
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