【欺きと涙のゲームセット!〈変装録〉】(4) 作・山崎久美子

 娘の試合が始まった。我が子から拒まれず観戦している他の人たちより、少し引いた木の陰から見た。やっと、見た。最初で最後だ。ここからなら、コートの全部は見られないけれど、娘の視界に入らない。

 身内の欲目かもしれないが、娘は上手だった。中学一年生の四月、一緒にテニスした時は私が勝ったのに、もう、レベルが雲泥の差だった。娘はモクモク広がる入道雲の下。私はコソコソと木陰の泥 ・・・

【残り 1651文字、写真 1 枚】



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