産業と商業、両輪で発展 江戸商人でにぎわう商都・天津村 【黒潮ものがたり 紀伊・房総】(35)

天津港と善覚寺
天津港と善覚寺

 房総半島を南下するJR外房線の終点は安房鴨川駅。その手前は安房天津駅、安房小湊駅です。この地域は鴨川シーワールドや誕生寺、鯛の浦(国指定特別天然記念物)などが観光地として有名です。

 鴨川市天津の浄土真宗善覚寺の過去帳で、天津村に滞在した関西漁民をみると、紀州有田郡の広、栖原の両村からの漁民を中心に紀州人が821人、他地域から180人とあります。干鰯(ほしか)やアワビ獲りに関わる漁師や商人、江戸へ鮮魚やミカンを運ぶ船業者、当地に生活品を卸す商人などが江戸をにらんで集まり、産業と商業が両輪で発展した南房州一の商業都市でした。

 善覚寺に残る史料の中に「先祖六右衛門従(より)申伝(もうしつたえる)事」があります。摂津国西宮に先祖を持つ四位(しい)六右衛門の魚の商売ぶりが紹介されています。

 江戸時代に入ってまもなく、 ・・・

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