駅前の酒店「店畳もうか」 沿線住民、複雑な心境 【消える鉄路 地域の行き先 久留里線一部廃止へ】(中)

現在のJR久留里線の終点である上総亀山駅=5日、君津市
現在のJR久留里線の終点である上総亀山駅=5日、君津市

 戦前から100年以上地域の足を担ってきたJR久留里線。久留里―上総亀山間の廃止を地元住民はどのように受け止めているのか。

 「食堂、八百屋、パチンコ屋まであったころは、上総亀山駅もたくさんの利用があった」。昭和から平成にかけて約10年間、同駅で駅員をしていた座間一郎さん(83)は当時のにぎわいを懐かしむ。駅周辺を歩くと、かつて商店だったとみられるシャッターを下ろしたままの店が点在している。

◆衰退懸念する声も

 廃止方針について、座間さんは「住民の反応は五分五分だ」と話す。「バスでも便数や停留所が増えれば良い」「自宅前にバスが来てくれるのならありがたい」と利便性向上に期待する人がいる。一方で「鉄道に特別な思いを抱く人は老若男女問わず多く、線路がなくなったら地域のイメージが悪くなる」「限界集落だと思われてしまう」と地域のさらなる衰退を懸念する声もあるという。

 現在、周辺で唯一残る商店は駅前の「亀田屋酒店」。80代の夫と店を切り盛りする女性は「列車が来ると時間が分かった。線路だけ見えるようになったら寂しいね」と打ち明ける。「久留里線が来なくなったら、店を畳もうとお父さんと話している」とも明かした。

 同駅近くに夫婦で暮らすパートの女性(64)は、子どもが小さいころ、木更津の実家に行く ・・・

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