八手網漁の唄で育つ 勝浦漁業史生き証人、石橋宗吉 【黒潮ものがたり 紀伊・房総】(8)

書籍「一本釣り渡世」と勝浦の観光地図
書籍「一本釣り渡世」と勝浦の観光地図

 黒潮の歴史を追って文献を調べていると、房総人が手を挙げて紀州漁民を歓迎している書籍に出会いました。加藤雅毅氏の「一本釣り渡世」(筑摩書房 1996年)は、漁師・石橋宗吉氏の語りを記述したものです。

 石橋宗吉は明治34(1901)年に勝浦市松部で生まれ、満12歳で漁師になった、大正、昭和の勝浦漁業史における生き証人です。代々弥惣兵衛と名乗る漁師の家系で、網船の雇われ漁師でした。父は初代宗吉で、紀州の漁師の娘であったのか、曾祖母の「きの」から宗吉は紀州の櫓漕ぎ唄を教えられました。

“沖の暗いのに コイショイ 白帆が見える ヨーイヨイ
【残り 880文字】



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